東野圭吾「私が彼を殺した」

 

【あらすじ】

婚約中の男性の自宅に突然現れた一人の女性。
男に裏切られたことを知った彼女は、服毒自殺をはかった。
男は自分との関わりを隠そうとする。
醜い愛憎の果て、殺人は起こった。
容疑者は3人。
事件の鍵は女が殺した毒入りカプセルの数とその行方。
加賀刑事が探り当てた真相に、読者のあなたはどこまで迫れるか。

 

 

東野圭吾の小説は色々読んでいますが、

実は個人的に私はこの「私が彼を殺した」が一番好きかも。
刑事「加賀恭一郎」シリーズの第5段作品。

ただ、これを読んでも最後まで犯人が誰か分かりません。!!

最近の作品は、最初から犯人が分かっているケースが多いのですが、
こういう本格ミステリー小説のほうが私は好きです。
父もこの本を読みましたが、誰が犯人か分からず、気持ち悪かったそうです。

 

巻末に袋綴じ解説で「推理の手引き」があり、

それを読んで私は犯人が誰か分かりましたが、
父はこれを読んでも分からなかったそうです。
実は私も、犯人の目星をつけたあと、ネットで検索して、

この本の解説をしているブログを読みました。

私の予想と同じ解説をしている人がほとんどでしたが、

作者自身のコメントはないので、もしかしたら違うかもしれません。
東野圭吾小説は、最後の最後でどんでん返しがあるから・・・。

ここからはネタばれです。

読んでいない人は読んだ後にどうぞ!!

———————————————————————————————————-

この小説は、「神林貴弘」「雪笹香織」「駿河直之」

この3人の視点で交互に物語が進められていきます。

容疑者になる3人の視点で描かれており、

すべて3人の「一人称一視点」です。

 

後の解説で謎解き小説の約束上、

地の文で虚偽の記述が書かれることはありませんが、

会話文ではその限りではないので嘘の供述もあります。

都合の悪い心理描写や、行動などが「省略」されているので、

ますますややこしくなっています。

殺したのは、この3人のうち誰なのか。

それで、小説のタイトルが「私が彼を殺した」となっています。

 

まず、この小説の中の登場人物について整理します。

 

①神林貴弘
小説の一番最初の章に出てくる人物。

大学の量子力学研究室で助手をしてる。

幼い頃、不慮の事故で両親を亡くし、妹の美和子と二人で生きていくが、

美和子とは違う親戚の家に預けられて育ったため、

15年間二人は離れて暮らしてきた。

15年ぶりに美和子と2人で同居し始めるが、そこで間違いが起こる。

孤独と寂しさ、そして信じられる人は美和子しかいない。

そんな特別な想いから、実の妹、美和子のことを深く愛すようになった。

美和子もそのような貴弘の気持ちを知り、一度だけ肉体関係を持つ。

 

 

②神林美和子
貴弘の妹。
会社員でありながら、人気詩人作家の顔を持つ。
貴弘の気持ちを知り、肉体関係を持つが、

実際貴弘をどう思っているのかははっきりと描かれていない。
兄の気持ちをしりつつ、穂高誠と婚約し結婚式を挙げるが、

結婚式当日、新郎入場の時に穂高が死んでしまう。
兄には、結婚式前日に「私もう吹っ切ることにしたから」と言い、

自分の気持ちにけじめをつける。

 

③穂高誠
美和子のフィアンセ。
脚本家でもあり、小説家でもある。

穂高企画の社長。映画製作も手掛けるが、
その仕事が失敗し、経営がかたむきはじめ、借金を負っている。
この小説では、人間的に最悪最低な男として描かれている。
離婚経験があるが、再婚相手として神林美和子を選ぶ。
美和子の才能に惚れ、その才能を自分のビジネスに利用するために、結婚をする。
美和子と交際しながらも、「雪笹香織」や「浪岡準子」とも関係を持つ。
結婚式当日に、何者かに殺されてしまう。

 

④駿河直之
穂高誠のマネージャー。
前の会社で横領したことがばれ、失業寸前で困っていたところに、
大学時代のサークル仲間であった穂高に誘われ、

穂高企画のマネージャーとして雇ってもらう。
浪岡準子のことが好きだったが、穂高のことが好きだった準子には本心を言えず、
自分の気持ちを隠したままでいる。
穂高がいかに汚いかをよく知り、

穂高の周りで何か問題が起こるといつも尻拭いをさせられるので、
穂高に対して憎悪を募らせている。

 

⑤雪笹香織
出版社勤務。
雪笹の妹が、美和子と同級生で、

その妹が美和子が書いた詩集をこっそり持って帰ったのを見たことで、
美和子の才能に注目し、乗り気でなかった美和子を詩人としてデビューさせる。
穂高の担当でもあり、穂高と関係を持っていたが、

穂高が雪笹を通して美和子を紹介させたことで、
穂高が結婚まで踏み切り、裏切られたことで穂高への憎悪心が高まる。
美和子のことは心から可愛がっている様子。

 

⑥浪岡準子
動物病院勤務。
駿河と同じマンションに住んでいたことから駿河と親しくなり、
以前からファンだった穂高を
駿河に紹介してもらう。
穂高と恋人関係にあり、妊娠したこともあったが、

結婚の約束をする代わりに堕胎させられる。
穂高と結婚できることを信じていたが、穂高が美和子と結婚することを知り、
結婚式前日、穂高の家で心中自殺をはかる。

物語の主要登場人物は6人。
このうち穂高を殺したのは誰かということです。
怪しいのは3人。
穂高を殺す動機があった「神林貴弘」「駿河直之」「雪笹香織」。
この物語で面白いのは、3人とも自分が犯人だということを

匂わせる語り方をしていることです。
3人とも穂高を殺す一歩手前まで来て手を加えていながら、

実際に殺した人物は一人です。

そしてその実行犯は。。。

 

「駿河直之」です。

 

 

最後P431の加賀刑事が見せた写真。

これに写っていたのは事件の最重要証拠品

「美和子のバッグ、薬瓶、ピルケース」

です。

加賀刑事はこの3つの品物の中に

一点だけ身元不明の指紋がついているといいました。
この指紋はピルケースについていた「穂高の前妻の指紋」です。

ここでP57駿河直之の章を見てみましょう。
ピルケースが実は2つあったという記述があります。

5行目から。

「前に結婚していた頃、当時の奥さんとペアで

買ったものだということを穂高から聞いていた」

そして穂高の妻のピルケースはどこにあったか。

それはP181駿河直之の章から。

 

11行目

「俺の部屋は一応2LDKということになっているが、

穂高企画の事務所も兼ねている。
おまけに、最近になって穂高が妙な段ボール箱を持ち込むものだから、

部屋は電器店の倉庫のようになっていた。
もっとも、段ボールの中身については大体見当がついている。
穂高の前の結婚生活を暗示させる品々だ。
無神経な穂高でも、前妻とペアで着ていたTシャツや、

前回の結婚写真などを新妻に見せるわけにはいかないと思ったようだ。
段ボールの中には、その前妻から彼宛てに宅配便として送られてきたものもあった。
穂高によると、彼女のほうも再婚の際、

前に結婚していた頃の思い出の品は邪魔になったので、
彼のところへ直接送りつけてきたということだった。」

この中には具体的にピルケースが入っていたという記述はありませんが、
ペアで買ったという思い出の品は妻にとっても邪魔なものになったことでしょう。

そして、最後にカプセルではなく、

ピルケースごとすりかえられるチャンスがあった人物は。

P147。後ろから1行目。
駿河直之の章。

『「例の鼻炎薬か」
おれは懐中時計に似たピルケースの蓋を開けた。
白いカプセルが一つはいっている。
「だけど、俺もすぐに教会に行かなきゃいけないしな」
蓋を閉め、ポケットに入れてから周囲を見回した。

すぐそばをボーイが通りかかる。
俺はボーイを呼び止めると、

「これを新郎のところに届けてくれ」といって、ピルケースを渡した。』

ここで駿河がポケットの中に忍び込ませていた

ピルケースを交換して渡したということが推測できます。

 

以上で謎解きは終わりですが、私はいつものような大どんでん返しからいくと、
美和子が犯人だったらもっとややこしくなって面白いなあと思ったんですが(笑)

美和子が結婚前に穂高の悪事に気づいて、

殺人計画をたててたとかね。

でもそうなると意味わからなくなるくらい、ややこしくなるかな。
でも、美和子の気持ちも兄にあるのか穂高にあるのかよく分かりませんでしたね。
どちらもダメだと思いますが、穂高は本当に

どうしようもない野郎という設定で描かれていたので
読んでて穂高の行動にムカムカムカムカしてました!

東野圭吾の作品には、読んでて本当にこっちが腹立ってしょうがないくらい
どうしようもない奴がなんか一人は出てくるような気がします。

Facebook にシェア

 

タグ:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

トラックバックURL

ページ上部に