【あらすじ】
薫。薫。薫。逃げて、逃げて、逃げ延びたら、

私はあなたの母になれるだろうか・・・。

 

愛する男性と結ばれることは決して許されない。

愛する男性の子供を産むことも決して許されない。

でも一度でいいから自分の手で我が子を育ててみたい・・・。

 

一度でも母になることを望んだ野々宮希和子が選んだ道は、

彼女さえ想像しなかった犯罪という道であった。

 

不倫相手の子供を身ごもりながらも、産むことを選択できなかった女性が、

不倫相手の妻が産んだ子供を誘拐してしまう。

東京から名古屋へ、様々な女たちに助けられ、

かくまわれながら、逃亡生活を続け、

小豆島にたどり着く。

偽りの親子関係。決して許されない関係と分かっていながら、

最後まで子供を愛し続ける母。

なぜ、誘拐したの?なぜ、私だったの?

自分の運命を大きく変えてしまった偽の母を憎むしかなかった薫こと秋山恵理菜。

幼い頃の「あの事件」が自分の運命を大きく変えてしまう。

 

そして、また自分もその憎い母を同じ運命をたどってしまうのか。。。

ラストまで息もつがせぬ傑作長編。

 

第二回中央公論文芸賞受賞作。

 

 

今日は皆さんご存じ、GWから永作博美さん・井上真央さん主演で

映画化されている「八日目の蝉」の感想です。

やはり、映画化されても本からまず読みたいという私の思いで、

気になる作品でしたので案の定、単行本を買って一気に読みました。

もちろん、気になっていたんですが、

この「角田光代」さんが最近めざましテレビで特集されていて、

角田光代さんの独特なキャラクターに惹かれたのも

この本を手に取ったきっかけとなりました。

 

もちろん、角田光代さんの存在は知っていたのですが、

やはり作家なのか感性が独特というか結構面白い方です。

角田さんが、輪島功一のボクシングジムに通っている姿がうつされていたのですが、

ボクシングをはじめた理由は、

「恋愛して、へこむので、強くなりたいから」と言う理由で、

昔恋愛して失恋したときにすごく落ち込んだのをきっかけにはじめられたそうです。

 

サンドバックにバシバシとパンチを決めて、

けっこう本格的に、ボクシングに取り組んでおられました。

 

そこまでは分かるんですが、

「ボクシングを始めて強くなりましたか?」と質問されたとき、

「別に強くなりませんでした!やはり落ち込む時は落ち込むんです。」と

あっけらかんと言ってのけたり、

前に付き合っていた彼氏が、サラリーマンで規則正しい人だったので、

自分もその人の生活に合わせるために8時半くらいに出勤する癖をつけ、

自分の家ではなくちゃんと仕事場を設けて決まった時間に出勤するようにしていたり・・・

 

また、「1ケ月に28個以上締め切りがあるとおかしくなる」といって、

28個以上は絶対仕事をもらわないように管理しているそうです。

 

私生活では、芥川賞作家の伊藤たかみさんと結婚していましたが、

その後離婚され、 2009年10月に、ロックバンド

GOING UNDER GROUNDの河野丈洋と再婚されています。

 

恋愛経験も豊富な方なのかなぁ~と感じられましたが、

この「八日目の蝉」を書いたのはやはり読んでいるかたが

次々とページをめくってしまうような、

どんどんその作品に引き込まれるような作品を書きたかったと

おっしゃっられていました。

 

確かに読んだ感想は、最初からすべてを明らかにせず、

時系列で少しずつ事件の背景や登場人物の気持ちが明らかになっていき、

一気に読まずにはいられない作品でした。

 

ここからは、本の感想&ネタバレとなります。

 

気になるかたは続きを!!↓(読んでいない人は注意!! )

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この「八日目の蝉」は、一章・二章と大きく2つの章に分かれています。

一章は、「野々宮希和子」が話者になり、不倫相手の妻の子供を誘拐し、

捕まるまでの逃亡生活 が描かれています。

 

 

二章は、野々宮希和子に誘拐され、

成長した薫こと「秋山恵理菜」が話者になり、

事件後の恵理菜の生活と並行して、事件の背景、

公判での判決、事件に関わった人々の証言や

その人達の生い立ちなどが浮き彫りにされています。

 

 

 

この小説では、男性も出てきますが、主に焦点になっているのは女性達。

生きてる上で様々な問題を抱えている女性達が描かれています。

 

 

しかし、やはり女性というのは男性には計り知れない

『母性本能』というものが潜在しているということを強く感じさせられました。

 

 

そして、この作品において必ずしも母性本能は

血縁関係にだけ生まれるものではないということ。

 

 

『血縁』を超えた愛情というのが、

男女関係以外にどの程度強く生まれるものか計り知れないけど、

希和子と薫(恵理奈)においては、

肉親よりも強い結びつきが生まれてたんだと思います。

 

 

ただ、それが誘拐という侵してはいけない行いであったものの。。。

 

 

またこの作品で面白いと感じたのは野々宮希和子が逃亡中に

約2年半身を置いた「エンジェルホーム」という施設。

 

 

この施設の存在は、なんか村上春樹の『1Q84』を彷彿させる存在でした。

 

 

やはりこのカルト的な宗教団体を作品に使ってくるところは、

モロ日本の作品らしいと思いました。

 

(韓国にもサイビ宗教という怪しい宗教団体が存在するので、

韓国でもそのような題材は扱われてるかもしれませんが)

 

 

 

世間では宗教団体に近いとされている施設では幹部女性による面談、

健康診断等の結果でメンバーと証人され、エンジェルホームで生活できる人は、

流産・堕胎経験があるか、先天的・後天的に不妊であるかを

告白するか診断された女性だけ。

 

 

そのエンジェルホームで「スタディ」という研修を受けている間に、

希和子達が何回も聞かれるのが「あなたは男か、女か」という質問です。

 

 

このエンジェルホームでは、

男か女かということは重要ではないという議論がなされますが、

やはりお腹を痛めて『子供を産む』ことができるのは女だけです。

『母親』になれるのも女だけです。

 

 

限定された女性達を受け入れてる時点で女か男かという質問は

矛盾するかと思いますが、

やはりこの小説を読むと、女性は男性と違った芯の強さがあると感じられます。

 

 

結局、不倫相手と実らぬ恋に溺れて、

決して犯してはいけない犯罪を犯した偽の母の姿を追うように、

また薫こと恵理菜も、大学生になってから同じように

不倫相手との子供をはらんでしまうのですが、

薫は最終的に一人でも産まれた命を守ることにします。

 

 

 

『八日目の蝉は、他の蝉には見られなかったものを見られるんだから。

見たくないって思うかもしれないけど、

でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどに

ひどいものばかりでもないと思うよ。』

 

 

 

私はまだ結婚もしていないし、子供も産んだことがないから、

実際自分がこのような境遇になった時、産むこともできないし、

現実的に考えてこの登場人物薫と同じように一人でも産むという決断は、

絶対できないって思うけど、

でも実際自分が母親になる瞬間、

なった時には今までと違う強さが産まれるんだと思う。

 

 

だれかのために、自分と血が繋がった子供の為に、

なんでもできるのかもしれない。

 

 

 

この小説で訴えたかったのは、

やはり女性の立場から見た女性の強さじゃないかなと思います。

 

『母強し』

 

 

扱っている話は不倫を材料にしているお話なので、前向きな話ではありませんが、

特に女性にとっては、いろんな境遇におかれた女性達が必死にもがきながら、

苦しみながらどれだけ前を向いて生きていっているのか

女性の強さを感じられる作品だと思います。

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