東野圭吾「手紙」

Filed Under () by Gatuchan on 05-05-2009

<table style=”width:75%;border:0;” border=”0″><tr><td style=”border:none;” valign=”top” align=”center”><a href=”http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167110113/fc2blog-22/ref=nosim/” target=”_blank”><img src=”http://ecx.images-amazon.com/images/I/41PZ804DTVL._SL160_.jpg” alt=”手紙 (文春文庫)” border=”0″></a></td><td style=”padding:0 0.4em;border:0;” valign=”top”><a href=”http://blog.fc2.com/goods/4167110113/fc2blog-22” target=”_blank”>手紙 (文春文庫)</a><br />(2006/10)<br />東野 圭吾<br /><br /><a href=”http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167110113/fc2blog-22/ref=nosim/” target=”_blank”>商品詳細を見る</a></td></tr></table>

【あらすじ】
幼い頃、両親を亡くし兄弟2人で生きてきた兄「武島剛志」と「武島直貴」。

心優しい兄剛志は弟を何としてでも大学に進学させてやりたいという気持ちのあまり、ある日強盗犯罪という大罪を犯してしまう。

兄が捕まった日から「殺人者の弟」というレッテルを貼られ、苦痛に満ちた人生を歩んでいくことになった直貴。進学、アルバイト、

就職、恋愛、夢・・・直貴が幸せを掴もうとするたびに「強盗殺人者の弟」という運命が立ちはだかり、

直貴の人生は狂わされてしまう。

月に一通ずつ刑務所から届く剛志からの手紙。

弟のことを何よりも心配する兄剛志の1通の手紙が直貴の人生を狂わせ、弟の直貴は兄に対して憎悪を抱くようになる。

犯罪加害者の家族の苦痛とはいかなるものかをテーマにして描かれた本作品。

世間からの差別や偏見は避けられない現実である事を悟った弟武島直貴が、新たな一歩を踏みだすまでを描いた作品。

【感想】

色々なレビューを見ていると、やはり「感動した」とか「泣けた」という声が圧倒的に多い作品ですが、まず私は犯罪者のレッテルを貼られ何度も人生に絶望しながら、何度も立ちなおって生きていく弟「直貴」の強さを見習わなければいけないと思いました。

人は誰でも辛い境遇から逃げたくなるものです。特に自分が犯罪を犯したわけではないのに犯罪者の弟というだけで、世間から差別や偏見をされる直貴。この理不尽な社会から逃げようとせず、現実を直視しながら生きていこうとする直貴に私は共感しました。

苦しいこと、辛いことがあってもまず現実を直視しなければいけないと思います。
この作品でも、直貴は差別されそうになる度に最初は自分から身をひこうとします。諦めようとします。でも、自分は何も悪いことはしていないのだから差別正々堂々と立ち向かっていけばいいと思いなおしまた現実を直視する直貴。傷ついてもまた新しい人生に向かっていこうとする直貴。
辛いことや苦しいことがあると、考えずにすぐ楽な方向へ逃げたくなる自分が少し恥ずかしくなりました。

次に、この本のテーマである犯罪加害者の家族に対する、差別問題です。
この作品でも重要なポイントになっている「ジョンレノン」の「イマジン」の歌詞にある「差別のない社会」。この作品の中で直貴が就職した新星電機の平野社長の言葉はまさに東野圭吾の考えを表しています。印象的な文章が多かったので、少し長いですが自分の今後の参考に引用しておきます。

差別はね、当然なんだよ。」

「大抵の人間は、犯罪から遠いところに身を置いておきたいものだ。犯罪者、特に強盗殺人などという凶悪犯罪を犯した人間とは、間接的にせよ関わり合いにはなりたくないものだ。ちょっとした関係から、おかしなことに巻き込まれたくないとも限られないからね。犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。自己防衛本能といえばいいかな。」

人には繋がりがある。愛だったり、友情だったりするわけだ。それを無断で断ち切ることなど誰もしてはならない。だから殺人は絶対にしてはならないのだ。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。自殺とは、自分を殺すことなんだ。たとえ自分がそれでいいと思っても、周りの者もそれを望んでいるとは限らない。君のお兄さんはいわば自殺をしたようなものだよ。社会的な死を選んだわけだ。しかしそれによって残された君がどんなに苦しむかを考えなかった。衝撃的では済まされない。君が今受けている苦難もひくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ。」

「逃げずに正直に生きていれば、差別されながらも道は拓けてくる・・・君たち夫婦はそう考えたんだろうね。若者らしい考え方だ。しかしそれはやはり甘えだ。自分たちのすべてをさらけだして、その上で周りから受け入れてもらおうと思っているわけだろう。仮にそれで無事に人と人との付き合いが生じたとしよう。心理的に負担が大きいのはどちらだと思うかね。君たちのほうか。周りの人間か。」

「しかしね、本当の死と違って、社会的な死からは生還できる」平野はいった。「その方法は一つしかない。こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない。君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりが出来れば、誰も君を無視できなくなる。その第一歩を刻む場所がここだ」そうして足元を指差した。

「差別」についてどう考えるか。
これは非常に難しいテーマだと思います。
人は誰でも「差別」をしたくないと思っていると思う。でも差別しないようにすることで、自分も同じように差別を受けそうになったら、被害が及びそうになったらそこから遠ざかろうとするのではないでしょうか。だれでも自分が一番大切だと思っています。だから、矛盾が生じてしまう。
差別をする自分も嫌だけど、差別をしないことで自分も差別の対象になってしまうことは避けたい。
こう思うのではないでしょうか。
だから、差別をしていないように表面上では見せるけど、差別を受けている人からは遠ざかろうとする。
この本に描かれている登場人物の中でも、直貴のバンド仲間(寺尾以外)、直貴の彼女や彼女の両親、職場の同僚・上司はそのように描かれています。その人達の気持ちを悟った直貴はもっと傷つくのです。

この作品では、ただ単に主人公に感情移入し、そして世間の冷たさや理不尽な扱いに同情するだけではなく、世間の直貴に対する態度もまた理解できるような作品でした。ここに書かれている「世間」には、確かに私も含めて言えることだと思います。

通常の東野圭吾の推理小説ではなく、人間の情を描きながら、社会的な問題にも言及する作品。この作品は新聞連載小説だったそうです。連載でここまで完成度が高いストーリーをかけるなんてさすが東野圭吾。一度読みましたが、何度かじっくり読みなおしたい作品です。

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