東野圭吾「さまよう刃」

Filed Under () by Gatuchan on 27-05-2009

さまよう刃 (角川文庫) さまよう刃 (角川文庫)
(2008/05/24)
東野 圭吾

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【あらすじ】

長峰重樹の愛娘が絵摩の死体が荒川の下流で発見される。
花火大会の帰りに少年達によって連れ去られ、蹂躙されたあげく殺された。
娘を失った怒りと少年法という壁への憤りから、長峰は自ら加害者を裁くことを決意し、その犯人達を追う長峰。犯人にたどり着いた長峰は少年のうちの1人を残忍な手段で殺害してしまう。逃走するもう一人の少年を追う長峰。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

【感想】

この作品の中には、現代の日本社会に向けて様々なメッセージがあります。

まず、現代の少年法の問題点。人間として許されない行為をしても、法律が少年を守っている。裁かなければいけないものが少年法によって保護されている。
犯人が未成年だという理由だけで、まともに罰することもできない。

少年が殺人を犯している事件は数多くありますが、私が一番忘れられないのは1997年、神戸児童連続殺人事件です。私が高校2年の時の事件だったと思います。
少年A・酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)は当時14歳の中学生でした。少年法で守られて、本名もでなかった。この事件で、小学生2名が死亡し、小学生3名が重軽傷を負いました。
少年が通った中学校の正門に置かれていた首から上の少年の顔が発見されたと聞いたときは、本当に信じられませんでした。本当にショックでしたが、その犯罪を犯した犯人が未成年の少年だったことにも驚きました。
この少年は、男児を殺しているときは、一生懸命殺そうとしているにもかかわらずなかなか死なない男児に対して腹が立ったりしたものの、同時に男児を殺しているという緊張感、あるいはなかなか死なない怒りなども含めて、殺していること自体を楽しんでいたということです。
しかし、この少年は8年で医療少年院の更生教育を終え、今は日本のどこかで社会生活を送っている。まもなく日本でも裁判員制度が始まるが、この裁判員制度によって日本の裁判制度はどのくらい変わるのでしょうか。 

今の社会では、自分でやったことに対して、まったく責任をとれなくなってきている未成年があまりにも多すぎます。
この本でも描かれているように、殺人を犯した少年「カイジ」は自分がやったことに対して人を一人死なせても何の罪悪感も持っていない。悪いことをしても、逃げたらいいと思っている。
その背景に描かれているのは、親達の管理のなさです。
現代の両親達が、子供にどのような教育をしているのかという教育問題についても触れています。
本来、両親は子供にとって威厳があり尊敬される一番の存在であり、子供が両親を超えられることははありません。
けど、今は子供が親よりも強くなってしまっています。親が子供を怖がる社会になってしまっています。だから、親は子供が悪いことをしているのを分かっていても、何も注意しないで黙ってみています。ファミレスでぎゃーぎゃー騒いでいる子供達を見て、叱らないで自分達だけしゃべっている両親を見ると、本当に腹が立ってしょうがありません。私が小学生の時は、買い物してる時にアイスが食べたいとだだをこねただけで、父がものすごく怒鳴りました。
とても厳しい父だったけど、今になって思えば私をきちんとした大人に育ててくれて良かったなと思います。なぜ今は、親がそこまで弱くなってしまったのでしょうか。

次に、マスコミの取り上げ方。プライバシーを守らない報道のやり方。マスコミは自分の利益の為、人が傷つくことを考えません。ただ、読者の興味を刺激することだけが目的なのです。
これは、日本だけの問題ではなく、韓国でも問題になっていることの一つです。芸能人も、事実がはっきりとしていない報道やインターネットの書き込みなどによって、精神的に追い込まれ自殺してしまいます。この作品では、行き過ぎる現代の報道のあり方についても問いています。

次に、レイプ・リンチ事件の増加。
特に未成年者のレイプ・リンチ事件。
人を殺すことに何の抵抗も感じない少年達。自分の行為によって、周りにどんな影響を与えるかとか人がどう思うかなんてことは考える頭もないんです。自分達が今したいことだけを、自由にしているから、犯罪が世の中に絶えないのです。

最後に、被害者の親族の心の傷。
この小説では、被害者の父、長峰の視点でストーリーが進行していくのですが、法的に社会的に許されないと分かっていながらも、自分の手を染めるしかなかった長峰の心情は、終始読んでいてもやるせなくて、本当に暗闇の中でどうしようもなくもがいている様子が痛いほど伝わってきます。

この作品が、映画やドラマ化されたら、長峰がアツシを殺すシーンは本当に残忍で文字で読んでるだけでも、ちょっと気持ち悪くので見るに耐えられるのかなぁと思っていたのですが、
2009年秋に映画化されるそうです。
長峰重樹役を寺尾聰、長峰の決意を知り、復讐を阻止しようとする新人刑事・織部役を竹野内豊が演じるそうです。
最近の映画やドラマ界はあまりにも小説の力を頼っているので、あまり好きじゃありません。
東野圭吾の作品は、ただの推理小説じゃなくて、どれも読者に考えされられる作品が多いけど、売れるからといって何でも映像化してほしくないというのが本音です。

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